・目標に近づけず、どうしたらいいかわからない
心理学の勉強をしていたときに、ふと気づいたことがあります。
ウルスラとは、スタジオジブリの発表した映画『魔女の宅急便』に登場する絵描きのことです。
下にウルスラの参考画像を載せました。
ウルスラがどのような場面で心理療法的な手法を使ったかを解説していきます。
曝露療法&逆説的介入
『魔女の宅急便』の内容はご存じの方も多いと思いますので、関係のあるところ以外は割愛します。
飛べなくなったキキ、教えるウルスラ
修行中の魔女である主人公のキキは、ある日突然、箒で飛べなくなってしまいます。
そんなキキの元にウルスラが訪れます。
宅急便の仕事もちゃんとできないので、休みをもらってウルスラの小屋に遊びに行ったときにウルスラは心理療法的には、かなり効果的なことをキキに教えてくれるのです。
下のやり取りは、ウルスラの小屋での2人のやり取りの一部です。
でも、今はどうやって飛べたのか、わからなくなっちゃった
描いて描いて、描きまくる
散歩したり、景色をみたり、昼寝したり、何もしない
そのうちに、急に描きたくなるんだよ
描いて描いて描きまくる
最初のウルスラの発言では、絵が描けなくなったときに『描いて描いて描きまくる』という方法を行っている、とのことです。
これは『曝露療法』に近いなあ、と感じました。
曝露療法とは、「恐怖を感じる状況に患者を直面させることによって、意図的に不安を喚起させる方法」と定義される
『エビデンスにもとづく カウンセリング効果の研究』171ページより引用
描くことに焦りや恐怖を覚えそうになったとき、逆にウルスラは描きまくることで焦りや不安を解消できたということでしょう。
ウルスラがどのように落ち込んで立ち直ったのか、実際の場面は映し出されていませんが、映画の中では、飛べなくなったキキはベッドに寝込んでしまっています。
まあ、自分のアイデンティティである『箒で飛ぶ魔女』という像を失うのはキツいよねー・・・。
そりゃベッドの中に引きこもりたくもなります。
なにもしない
ウルスラは描いて描いて描きまくったあと、それでも描けないときには『なにもしない』方が良いと薦めています。
実はこの方法は『逆説的介入』という方法に非常に近いです。
逆説的介入とは、「セラピストがクライアントの問題に対して、”治療的な方向とは反対の(antitherapeutic)”スタンスをとっているようにみえるアプローチ」と定義できるものである
『エビデンスにもとづく カウンセリング効果の研究』174ページより引用
この心理療法は、例えば不眠に悩む患者に、逆に可能な限り眠らないように勧めるという方法を取ったりします。
この方法、なんか体感的にもわかります。
って、思うよりも
って、考えている方が眠たくなっちゃいますもんね。
先ほどの曝露療法も実際に効果が確認されていますが、逆説的介入の平均効果量は0.99というスゴイ数値を叩き出しています。
(効果量は0.2:効果小、0.5:効果中、0.8:効果大という指標です。)
しかも、この方法は、危険性が他の心理療法と比べても全然ないという優れものです。
まとめ
・「描いて描いて、描きまくる」
→恐怖に対して、向き合うと緩和される:曝露療法
・「なにもしない。そのうち、に急に描きたくなるんだよ」
→あえて逆のアプローチをしてみる:逆説的介入
今回は専門的な話を書いてみましたが、ウルスラの教えが意外にも日常生活に結び付くもんなんだなー、と少し感動しました。
とはいえ、『魔女の宅急便』はフィクションであり、僕は今日紹介した心理療法の専門家ではないので、この話はエンターテインメントの一環として捉えていただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
★参考資料★