お土産はいらないと思う人の心理【返報性の原理】

・お土産もらうのがイヤだ

・恩返しができなくてモヤモヤしている

 

以前に参加した結婚式でこんなことがありました。
僕は新郎のことをよく知っていて、結婚式&披露宴に呼んでもらいました。
披露宴の最後に、新郎が母親へ感謝の手紙を読み上げました。
その新郎は、普段はとても冷静沈着な雰囲気なのですが、手紙を読んでいる最中にしゃくり上げるほど号泣しました。

僕はその彼の姿がとても意外だったことと、親への恩義というのは途方もないものなんだなあと感じました。

 

実は親への恩義も、お土産をもらいたくない人の心理も根っこは一緒です。
この記事では、人が人たらしめている人類史上最強の心理学の武器を紹介します。

では、みてきましょう。

 

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返報性の原理

返報性の原理

親へ恩義を感じる、お土産をもらいたくない、などの気持ちは心理学的には『返報性の原理』が働いています。

ちょっと専門チックな言葉を出しましたが、内容はとてもシンプルです。
与えられたら、返さないといけないということです。

 

人類史上、最もパワフル

この心理は『影響力の武器』という心理学の名著中の名著の中に書いてあるのですが、『返報性の原理』は最初に紹介されています。

人に影響を与えるものは、大きくカテゴリー化すると6つしかないと著者は語っており、その中でも『返報性の原理』は人間を人間たらしめたものとまで言われています。

 

お金≒恩義

人類が狩猟採集民として生きていた時代は、150人未満の小さな部族として暮らしていたと推測されています。

小人数の部族の中では、全員が全員の顔や関係を知っているため、お互いに助け合ったとき、誰が助けてくれたのかをしっかり把握していたはずです。
そういう暮らしの中では、お金は必要ありませんでした。

しかし人類がもっと大きな人数で、助け合おうとしたとき、誰が助けてくれて誰に助けてもらったのかわからなくなってしまいます。

そこでお金が登場しました。
お金を間に置くことで、顔を覚える必要がなくなったため、スムーズに助け合いができるようになったのです。

 

お金は本能に組み込まれていない

  1. 小さな部族で暮らす
  2. 恩を返し合う

という生活を人類は250万年くらい続けてきたため、『恩をもらったら返さないといけない』という本能は遺伝子レベルで刷り込まれています。

お土産をもらうということは、お土産か別の形で恩義を返さないといけないという本能が働き始めるので、心の中がモヤモヤするのです。
最初からモヤモヤしたくないから、そんなもの欲しくない、というのがお土産をもらいたくない人の心理なのです。

 

恩を返さないと、死ぬ

恩知らずのご先祖様は、最終的にどうなる運命だったのでしょうか?
小さな部族で暮らしてきた本能には、死の恐怖が刻まれていると僕は推測しています。
なぜならば、恩を返さない人間は小さな部族の中では役立たずどころか、害悪を成す可能性があるため、部族の外へ放り出される可能性が高いと考えられるからです。
孤独になれば、野垂れ死ぬ可能性は格段に高まります。

だからこそ、恩を返せないとあんなにモヤモヤするのです。

 

親子関係をお金に換算すると・・・

冒頭で、新郎が母親への手紙を読んで号泣するほどの恩を感じている話をしました。
少し不謹慎な話かもしれませんが、もし、親子関係をお金に換えようとしたらどうなるのでしょうか?

 

子育て費用はいくらか

子供1人を育てるための費用は、教育費+養育費で2500~4200万円くらいかかるそうです。
話を単純化するために、ざっくりあいだを取って3000万円とします。

 

恩義はいくらか

次に、恩義の重み付けをします。
どういうことかというと、3000万円分の恩義をもらったとしたら、きっちり3000万円返すだけでは心理的には恩を返したことにはならないということです。

 

それがよくわかる実験があります。
保健に関する調査用紙を返信してもらう際の方法を変えることで、どのように返信率が高まるか、という実験です。

1つ目は、調査用紙を返信すると50ドルもらえます。
2つ目は、調査用紙と共に5ドルが同封されています。

その結果、なんと2つ目の5ドル同封されていた調査用紙の返信率は2倍でした。
先にお金をもらったことに対する恩義の効果がとてつもないことがわかりました。

 

では、恩義の値段はいくらでしょうか?
単純計算すると、1つ目の調査用紙に返信すると100ドルもらえることにすると、返信率は同じになると計算できます。
ただもっと話を単純化するために、恩義の効果は10倍としましょう。

 

親子関係の恩義の値段

3000万円かけて育ててもらって、10倍の恩義効果があることを計算すると、なんと3億円払わないと釣り合わないことになってしまいます。
下手しなくても、一生かかっても払いきれませんね。

 

親子という聖域

もちろん一生かけて3億円払う子供はいませんし、払わせる親もいません。
なぜでしょうか?

それは親子関係は大金を払うと、破綻するからです。

 

親が望むこと・子が望むこと

生物学的にみると、子供を産むのは親の遺伝子を残していくためです。
ですが、子供を産んでも子供が死んでしまっては意味がありません。
親が子供に望むものは、お金ではなく元気に生き永らえることです。

親が子供に大金を望むと、生活が立ち行かなくなってしまいます。
逆に子供は親に対し、お金で返せなくても元気な顔を見せることでしか、恩を返すことができません。

無から有を生み出して、なおかつ基本的に見返りを求めず育てる親と、元気に生きていくことでしか親に返せるものがない子供。
そりゃ『切っても切れない縁』と言われるわけですね。

 

まとめ

・『返報性の原理』が人間の文明を創った

・現代は、恩義がお金に変換されている

・親子関係はお金に換えられない

 

人類を創ったと言っても過言ではない『返報性の原理』は、今現在でも超強力な心理作用をもたらします。
逆にその心理作用をしっかりと理解し、扱うことができれば複雑化した社会でも生きやすいかもしれませんね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

 

★参考資料★

子育て費用は総額でどれくらいかかるのか mattoco Life

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